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日本人ピアニストのコンサートチケットが当った

 
知らない人の名前で、メールが飛び込んできていた。

見慣れない人の名前には気を付けること、というのはインターネット上でのメールのやりとり、特に受信の際には警戒するようにというのが常識になっています。質の悪いウィールスがメールと共に送られてくる危険性が高いからだ、というのが理由ですよね。

だから、知らない人の名前でメールがやって来ると警戒するのは当然。
今回もちょっと緊張した、「あなたは当選しました!」という件名に絆されて何も考えずに直ぐにメールを開いてしまうなんていうことはありませんが、というのも既にメールは開いた状態でもわたしの目の前、モニター画面上に私が許可した訳でもないのですが、見える。でも普通のメールとはちょっと違った印象を受けた。

 まあ、アンチ・ウィールスソフトウェアはインストールあるし、何らの警告も出てこなかったのだし、ウィールス付きのメールではないのだろうと理解した。でも知らない人の名前だ。一度も見たこともない。

 メールの送信者名が読める。そして送信者宛も送信者名になっている。つまり自分で自分宛に送っておきながらも、わたしのメールボックスにも送っている、届いている。まあ、この手のテクニックは私も使ったことがあるので、それはそれで問題はないのだろう。


Herzlichen Glückwunsch!
Sie haben 2 Freikarten für das Konzert von "Mitsuko Uchida" am 16. Februar 2013 um 19.30 Uhr im Stadttheater Greif in Wels gewonnen.

 当選した? コンサートのチケット2枚当選した!?
 本当だろううか、とちょっと信じられない。

 当選しました、云々云々、といった件名の日本語メールを受け取ることも時々あったし、そんな文句で引っかけて釣ろうとする輩もいることだし、ドイツ語の世界でも同じような手を使って、相手を騙すような、受信者を釣ろうとする変なメールが届くようにもなったのか、と一瞬肩がかったるい思いになってしまった。



 
 インターネット上で検索してみると、結構有名なピアニストであるらしい、という噂は耳にしていたというのか、知っていました。でも一度もその作品を真剣に聞いたことはありませんでした。新聞紹介記事でも、世界的に有名な、という形容詞がその人の名前の前に付けられている。そんなにも有名な人の演奏が聴ける。



        *     *

 確か、締め切りの2日前頃に応募した。
 インターネット上で応募。手間も掛かりません。便利です。

普通はハガキに何らかの回答やら解答を記して、切手を貼って、そして投函するといったことをしていたのですが、今はそんな手続きもしない。面倒くさい。インターネット上で必要事項を記入して、直ぐに送付、応募できてしまう。そういう手軽さ、迅速性。


 気が向くといろいろとチケットの抽選に応募しているが、応募したことも直ぐに忘れている。
もしかしたら、という気持ちはいつも持ち合わせている、それを射幸心というのでしょうか、でも毎度のこと、殆ど当たったことがないので、応募しても当選することはないだろうと期待していませんでした。
では何故応募するのか? 当然ですね。応募しなければ、当選することは絶対にあり得ない。

 隣町にやってくる、という。何か用事があるといつも自転車を駆って行く隣町でもあるが、約40分間は掛かる。まあ、自転車運転には慣れているので、隣町までのサイクリングは朝飯前といった感覚、ちょっとした長距離だという気はしない。慣れた道、慣れた体、肉体的には年を重ねてきていても、まだ気が若いからか。

 例えば、ウィーンまで列車に乗って、2時間ほど掛けて、コンサートを見に行く、という話とは違う。往復4時間も掛けて、見に行くほどの大仰なこととは思われない。それほどまでに価値を置いていない、自分からどうしてもそれを見なければ死んでしまうといった風な深刻な気持ちはない。まあ、そういう価値観、見方しか出来ない、わたし自身の思考的限界であるといえば、それまでのこと。

 ある年の新年早々、ウィーンまでコンサートを見るために行ったことがあった。息子の長男が我々夫婦の為に、クリスマスプレゼントだと我々に内緒でチケットを買ってくれた。チケット代だけではない、ウィーンは近くのホテルに2、3日滞在できるようにホテル代まで出してくれた。

テレビで中継があるといつもその番組を見ている我々の姿を背後から見ていたのだろう。世界中、ヨーロッパ中を公演旅行している人気のバイオリニストとオーケストラ−だから、しかも今回はウィーンにやって来るということで、ちょうど良い、親を喜ばして上げようと大判振る舞いをしてくれたのだろう。

 買って貰った、プレゼントして貰ったということで往復4時間の列車に乗ってウィーンでのコンサートを見に出かけた、例外中の例外。現代のワルツ王と称される? アンドレ・リューのコンサートであった。


         *     *    

 当日の夕方、ウィーンの有名な大ホールは観客で満杯であった。もちろん、舞台の近くの席は高すぎて高すぎて購入出来るものではなかっただろう、そんなチケットを貰ってはバチが当たる。我々は野球場で言えば、外野席の更に後ろ、天井に近い場所であった。随分と遠い所から本人と本人のオーケストラ−が演奏するのを望見するという。いつもの聞き慣れた演奏。幸せな気持ちにしてくれるワルツの数々。思わず足もリズムを取っている。

 日本人ピアニストがやってくるその日の午後、、久しぶりに知り合いの日本人同士の食事会を持った。腹を一杯にした後、午後7時半からの開演ということで、現地を午後6時過ぎに出発、土曜日だったせいか、アウトバーンは空いていた。劇場前にはちょっと早めに着いた。

 中に入ると、正装した人たち、皆オーストリア人だろう、日本人は見えない。我々二人だけのようだ。我が奥さんは風邪で出かけられない、残念、ということで、食事会で同席の、別の奥さんを私は誘った。そのご主人の運転で劇場まで送って貰った。

 初めての劇場だ。小さな劇場だから、とそのピアノを弾くし、歌うし、ピアノを教えている知り合いの奥さんは教えてくれる。初めての劇場ではないらしい。以前にもここにやってきているようだ。でも、今回は無料だ、無料でコンサートに参加できる。

 無料だから、やってきたと言えないこともない、少なくともわたしの場合は。それに日常生活の中にどっぷりと浸かってしまって、芸術的な鑑賞という側面が欠けている。

 ウィーンに長期滞在している日本人のブログなどを時々目にして読むと、劇場通いをしている人がいる。何度といろいろなチケットを買っては芸術鑑賞の夕べを過ごされていることに、うらやましいやら、お金持ちだからできるのだろうか、と思ったりして、同じ日本人だとしても違った人種に属するのだろうと思ったり、そういう人もいるのだろうとその人の境遇の良さに背後で拍手を送っている。


              *     *

 開演前まだ時間があって、雑踏の中、何をしよう。まだ席に着けないのだろうか。我々のチケットは3種類のチケットでも購入すると一番安いチケットに属すものだった、自分一人で座席確認のために、また中がどうなっているのか、ちょっと確かめるために、ドアーを押して劇場の中へ入って行った。

 薄暗い。赤いライトが天井や壁から所々淡く照っている。だれもまだ入ってきていない。私が最初であった。やはり、席は2階、ドイツ語ではバルコンBalkon と称される場所だ。そこからは目の下、ステージが見下ろせる。すでにグランドピアノがその真ん中に一台居座っていた。


 劇場内、席は殆ど埋まった。埋まっていないのは我々が腰掛けていてBalkonだけ。後ろを振り向くと空いた席が見える。ほぼ満杯といえよう。600人収容の劇場とのこと。

 今晩の演奏者、ご本人が登場した。
 本物の本人が観客に深々と一礼、ピアノの前に腰掛けた。演奏開始だ。

 一番前の席、4席が空いたままになっているのが見えた。
 休憩時間に移動出来るのでは? と思った。その思いを一緒にやってきた奥さんにも伝えた。
 下に移動しませんか? 直に聴けるし、直に見ることも出来るし、、、。
 笑っているだけで、答えない。

 休憩時間が終わり、下をみると相変わらず4席は空いたままだった。そんな浅ましことを考えるのは私だけだったようだ。

 演奏者は実は12日にウィーンで同じようなコンサートをする予定になっていた。が、健康上の理由でキャンセルとなった。健康が回復したのか、16日の当日、演奏を聴くことが出来た、見ることが出来た。でも、何となく病み上がりという印象もなきにしもあらずであった。

 モーツアルトは演奏プログラムには入っていなかった。バッハ、シェーンベルク、シューマンの三人の作品、どれもこれもと余り聞いたことのない作品ばっかりであった。

 モーツアルトを期待していた観客と感じたのか、アンコールでは一曲、短めなものが演奏された。二回目のアンコールは実に短かった。30秒ほどだっただろうか。
ドイツ語の言いぐさというのか、Weniger ist mehr. が思い出された。

posted by austrian at 20:07 | オーストリアでの日々
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