ベッドから起き上がってからはいわば朝のルーティンが一つ一つと行われます。
ベッドからまたは寝床から起き上がって出て来たら、次には何をしますか。
人それぞれかと思いますが、
大抵は洗面室に行って洗面したり、同時にトイレが近くにあれば、
トイレを済ませ、そして歯を磨く人もいらっしゃるでしょう。
この朝起きてから歯を磨くということの意味がわたしには
長らく分かりませんでした。
歯を磨くのは食後と決まっていると常に思っていたからです。
朝歯を磨く人たちの心の中がどうなっているのか、その動機が分かり兼ねていました。
朝起きたら、歯を磨きますか?
わたしは相変わらず、歯は磨かない、でも自分を磨きたいとは常に思っている。
顔クリーム使うようになった。以前だったら考えたこともなかったのに。
ちょっとしたきっかけで、朝の歯磨きについて思い出す。やはり気になるのかも。
歯ブラシが目の前に置いてあることに意識が行く、
いつもとは違ったことをやり始める。
なぜか今回はつい手に取ってしまった歯ブラシ、
口の中が何となくむしゃくしゃしていて気分よろしくなかったので口の中、
掃除する意味で歯を磨いたとか。うがいもついでにやってしまった。
朝のルーティンを終えた後、
いつもの通り、朝食を取るためにと足はキチンに向かう。
朝食を抜く人もいるそうだが、私は抜かない人たちの一人だ。
ドアを押して開けて入ってゆくと、、、、
やっぱり、わがベターハーフが既にテーブルに一人で腰掛けていた。
朝食は既に済んでいたようだ。
わたしは遅れて起床したから、朝食も遅れて取ることになった次第。
時に一緒に起床することもないこともないが、
起床後、朝のルーティンが全く同じように並行してこなされてゆくとは限らない。
男女の違いとも言えようか。
起床後にシャワーを浴びる人いるらしい。
また朝シャンをするとか。
わたしは殆どシャワーを浴びることはないが、
浴びるとしたら就寝前である。シャンプーも。
時に起床後の体に疲れが残っていて、更には部屋の温度が下がっていて、
寒さだるさを感じるので、体を温める意味でもホットシャワーを浴びて、
心身共に完全に目覚めさせる。
さて、キッチンへと入って行って、言った。
”Guten Morgen!”
テーブルに向かって腰掛けていたベターハーフは朝の挨拶に応じたが、
心なしかかすれ声、積極的な反応とは感じられない、見えない。
よく眠れなかったのか。
もう一度、元気に言ってみた。訊いてみた。
"Guten Morgen! Gut geschlafen?"
"Bei mir schon."
一度挨拶したならば、それでもう良いということなのであろう。
何か映画のセリフ、朝の挨拶の練習をしているわけでもあるまい。
監督の思い通りのシーンになっていないので、やり直したつもりだったのだが、
相手はあまり乗り気でもその気でもないようだ。
* *
テーブルの端には本日の朝刊、第一面が目に飛び込んできた。
第一面の大見出しが読めた。
Die Ski-WM beginnt mit einem Lächeln.
オーストリアスキーチームのエース、女性スキーヤーの微笑み顔写真が掲載されていた。
本日(2017年2月7日)から、スイスは St.Moritz でスキー世界選手権大会が開催
されるのです。
その見出しに刺激、ヒント、インスピレーションを得て、
こう挨拶の続きを大声で言った。
"Jeder Tag beginnt mit einem Lächeln!?
Mit Ei n e m L ä che ln!"
相手からの Lächeln 微笑みが返ってくるものと、
それを暗に希求するかのように、
ちょっと意識的に強調するかのように微笑みながら繰り返した、
Mit einem Lächel と。
そうして微笑みが返ってくるかと思いきや、
相手も私に負けずにドイツ語作文で返してきた。
”Jeder Tag beginnt mit einem Kuss!"
"Ach so!?"
えええ? そういうものなんかい!?
朝の挨拶だけでは十分ではなく、
さらには顔を近づけて Kuss をすることが求められているらしい。
朝の挨拶と同時に Kuss が伴わなかったから、
Kuss が来ると思っていたのに Kuss が来なかったので、
それに対するちょっとした不満を元気の無いような返事で以って抵抗したのか。
”Jeder Tag beginnt mit einem Kuss. まえからそういうことに決めていたでしょう”
「決めてあったでしょうって、いつから決めたのだ?
勝手に自分で決めたのではないのか」
まあ、議論しても埒が開かない、相手の満足の行くように、
Kuss でも以って今日は始まることと相成った。
Lächeln の方は遅ればせながらも、Kuss が終わった後に続いたかのように見えた。
まえから決めていたでしょう、というふうに言っていたが、
考え返してみると、西洋ではそれは伝統習慣になっているのよ、
と言いたかったのを個人的なことばで言い換えたのだろうと解釈した。
私は更に別のドイツ語作文をした。
Vor dem Schlafengehen bekommt man auch einen Kuss.
Gute Nacht! Schlaf gut. Bis morgen.
Mit einem Lächeln gehen wir ins Bett und träumen süße Träume.
Morgens begrüßen wir uns mit einem Lächeln. Stimmt?
Guten Morgen! Gut geschlafen?
Mit einem Kuss fängt ein neuer hoffnungsvoller Tag an.